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2019.11.05

コラム|地域と人をイキイキさせる演劇の力(佐賀)

 私は演劇をどうすれば身近なものにできるかをずっと考えてきました。

 高3で渡米し、世界の演劇事情を見てきました。日本では、特に地方では一般的には演劇が遠い存在だったので、それをなんとかしたいと思う気持ちが芽生えたのは、2008年夏に佐賀に戻ってきた時でした。

 その当時は、佐賀では演劇というものが一般的に社会の中での存在感が低かったと言えます。しかし、そこに落胆するのではなく、まだ地域社会において幅広く認知されていないのであれば、アプローチを変えることで演劇文化を根付かせることができるのではないかという可能性も感じました。

 まずは演劇ができることの可能性に気づいてもらう必要があると感じました。これまで接点がなく必要がないと思っている方々に、もしかしたら演劇を使って何かができるかもしれないと思ってもらうということです。実は、これは私が思いついたわけでもなく、昔から何か大事なテーマを伝える方法として演劇が使われてきました。
 演劇が始まったと言われる古代ギリシャでは、劇場に集まり観劇することが市民の義務であり、そこでモラルなどを学んだと言われています。つまりは演劇の根本は市民の教育だったのです。

 そんな原点に戻ってみる発想から、様々な人たちに演劇の可能性について私のアメリカでの経験を踏まえて話しをしてまわりました。少しずつ共感してくれる人たちが増えていき、人権・同和問題などについての演劇、歴史を伝える演劇(人物、出来事、物語)、防犯演劇(交通安全、詐欺防止)、インターネット情報モラル啓発劇などの実践につながりました。

 佐賀に戻ってから様々な人たちの出会いの中から生まれた代表的なものが、私のライフワークの一つとなっている「幕末・維新 佐賀の八賢人おもてなし隊」です。
 幕末・維新期に佐賀が輩出し、明治政府の礎を築いた賢人たちの史実をもとにした20分ほどのオリジナル寸劇を上演する活動です。当時、佐賀市観光協会にいらっしゃったプロデューサーの桜井篤さんとの出会いがあり、観光のプロと演劇のプロの二人で協力して2012年2月に立ち上げました。
 佐賀城本丸歴史館で開催されている歴史寸劇定期公演(毎週日曜日、1日5回)を同年9月に開始し、今日まで欠かさず上演を続けています。この活動があることで、佐賀が「毎週演劇がある町」になり、ありがたいことに遠方から我々を目当てに佐賀に来てくださるお客様もいます。たまたま寸劇を見てくださる方々との出会いでは、演劇は意外に面白いと思ってくださることにつながっています。様々な団体や行政からの上演やイベントなどで寸劇の作成依頼なども受けています。佐賀の遺産である歴史をテーマとし、全て「Made in Saga」で演劇を活用した特徴的な事例だと言えます。

 これまで約11年間、私は佐賀での活動を通じて地方における演劇の役割と可能性を模索してきました。多様化する現代社会において演劇が社会的に影響を与える可能性は大きいです。表現・コミュニケーション能力育成をするこができます。地域で人を育てることがきます。町に文化が定着します。つまりは、演劇は地域と人をイキイキさせることができるのです。
 これから変わっていく地域社会においても、演劇が必要とされ続けられるよう、さらなる文化の定着と発展を目指して邁進してまいりたいと思います。


演劇家 青柳達也 活動略歴

高3で渡米し、アメリカの大学・大学院で演劇学を学び、演劇活動と教育に携わる。チェコ、ポーランド、コスタリカなどでの演劇活動を経て2008年帰国。佐賀大学において演劇教育の科目も持つ。
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