2025.01.22
コラム|筑豊で演劇を続けて(福岡)
こんにちは。私は飯塚市で劇団時の駅の代表をしている宮下治代といいます。
劇団時の駅は1987年に創立、今年10月に50作品目の記念公演を開催予定です。
私がライフワークの演劇と出会ったのは今から50年前、高校演劇界で著名な劇作家の林黒土先生(後に当時の大谷短期大学演劇放送コース教授)が顧問をしていた嘉穂東高校の演劇部です。
当時、林黒土先生は心と身体の解放をテーマに実験的な演劇生理学を模索していました。
お陰で私は野口体操や竹内敏晴さんのイメージ体操などを中心とした貴重な演劇体験が出来、今日までの大きな糧となっています。
また当時の福岡県大会では様々な人との出会いもありました。同じ学年の田川高校の中島かずきさんや大濠高校のいのうえひでのりさん達(のちの劇団☆新感線のお二人)のテンポのある舞台は秀逸で今でも印象に残っています。
劇団時の駅2024年公演「満ち 足りた散歩者」
劇団創立当初はバブルの時期でもあり、企業のメセナ公演で鹿児島や大分などで公演をしたり、筑豊の小中学校公演も多数してきました。
20代の劇団員達も家庭を持ち、仕事も重責を背負うようになり、今や親の介護もでてきました。(稽古場に託児コーナーを設けた時期もありましたが・・)
時代に沿い、劇団員の生活環境に合わせ変化しながら、芝居を創っています。
劇団活動の課題はたくさんあり、続けるのはそれぞれの団員の創意工夫が必至です。
しかし私は、アマチュア劇団の弱みは裏返せばそのまま強みと思っています。
演劇は特別なことではなく生活の一部として、非日常をお客様と楽しむ場所だと思っています。
地元で生きる私達が作る芝居を地元の方々に見ていただくことに価値があると感じています。
筑豊という土地柄は嘉穂劇場を始めとして芝居小屋がたくさんあった歴史があります。
(炭鉱閉山前は遠賀川流域に48座あったそうです)
舞台をとおし多くの人との出会いがあり、筑豊の土壌に見守られ育まれていただいている感があります。
今後も地元に生きている私達の人生の悲喜こもごもを舞台にのせていきたいと考えています。
劇団時の駅2023年公演「家族百景」
また、筑豊には1969年創立の劇団やしゃぶしがあります。
創立当時の筑豊は、「エネルギー革命」の名の下に切り捨てられ、疲弊のどん底から這い上がろうとしていた時期でもあり、演劇の力で、地域の再生に少しでも役に立ちたいと、筑豊を舞台とした作品を中心に公演を行なっています。
代表作は上野英信著「追われゆく坑夫達」現代の狂言「穴」(ふじたあさや脚本)です。
この作品は初演の1973年からもう50年を超え、北海道から九州一円で200回以上の公演を重ねています。劇団員の粘り強い文化活動の賜物と思われます。
私も20代の頃から何度も見ましたが、いつの時代にも通じる普遍なテーマに感動します。
機会があったら、ぜひ見ていただきたい作品です。
劇団やしゃぶし「穴」
宮下治代(劇団時の駅 代表)
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