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2015.03.24

コラム|民と官の共働で育つ演劇活動(大分)

こんにちは! 大分県の片田舎九重町に暮らす小幡です。よろしくお願いします。
私は九重町の演劇活動の起こりについてお話しします。

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子育て中にコンサートや演劇を親子で観たいと思うと、福岡や大分に一日がかりで出かけるしかない状況だった。母親たちで劇団に招く計画をしても「ホールがなければ・・」と断られるばかり。「体育館でもいいよ」と言われた時、涙が出た。初めて出会った「劇団 風の子」。その舞台を観た親子のはじめる笑顔を忘れることができない。

私たちは「ホールのある文化センターが欲しい」と陳情しながら、町内の体育館を回り年1回の公演活動を続けてきた。平成7年度、文化センター建設がスタートし完成は11年3月となった。当時、私は教育委員会にいたので、杮落しは町に伝わる長者伝説をミュージカルに創作しキャストは町民とすることを提案した。しかし「のど自慢」や「アーティストの招聘」が意見の大半を占め、予算のこと、指導者のことで創作劇などあり得ないとされる意見に押された。センターは誰の為に作られるのか、客席で見ているだけでは町民が主体者にはなれないのではないか、町民が舞台に立ちスポットを浴びる経験こそ施設は私たちの物と実感するのではないかと説得を続ける傍ら、経費を見つけるために県や民間の助成事業を探し、地域創造の助成を取り付けることができた。指導者は県内の大学や新聞社などに協力を求め、台本・演出(県民演劇代表)・音楽(大分大学・県立芸短大)の先生方に了解をもらった。県内の第Ⅰ人者が集い、町民に本気で指導を頂き、3年半の努力で杮落し公演は大成功に幕を下ろした。

制作の途中で芸短大の先生に「歌は本当に下手。うちの学生を使いなさい」と言われて、私は「町民でなければ、町の文化活動は続きませんから」と答えたが、不安はぬぐえなかった。演出は「たとえ100円でも料金を頂く以上、素人だからという甘えは許さない。懸命さが君たちの最大の武器。10年努力すればきっといい舞台になる」と話してくれた。田舎であっても機会に恵まれれば実現する夢があることを知った町民は劇団を結成し毎年1回の公演を続けている。継続していく中で会員は減少していき、キャストの確保に悩みながら、県内の同士とつながりを深めたいと願っている。

今年の2月1日、町制60周年を記念して、町民創作劇「観八翁物語“笑門”積善の家に余慶あり」という郷土の偉人の生涯を描いた作品を上演、1年間の取り組みだった。

脚本・演出は御縁の深い先生方にお願いし、照明・映像など専門的なものを除くスタッフ・キャストは町民で総勢80名を超える大きな舞台となった。今では演劇やミュージカルが町民の中で定着し、資金や宣伝に大きな力を寄せてくれている。

九重町

民と官が共働で作り上げようと努力する姿が九重町民の誇りです。
九州各地で演劇活動を続けられる仲間の皆さんのご活躍をお祈りします。

町制60周年町民創作劇制作委員会事務局
小幡千種

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[…] 「官と民の共働で育つ演劇活動(大分)」というコラムでは、大分県玖珠郡九重町という自然多き山間地での演劇事情が綴られている。「観劇をするのに、一日がかりで福岡や大分まで出かけなければならない」「劇団の招聘を計画しても、会場がないと断られる」といった環境での演劇活動は、同じ九州といえども比較的環境の整っている都市部とは全く違う大変さがある。九州で演劇活動を行う場合、東京とその他の県や地域といった、“中央との格差”が語られることがあるが、よくよく考えると、九州という地域内での格差も確かに存在している。九州演劇と一括りで片付けられない実情を、このコラムから伺い知ることが出来る。 […]

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