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2013.02.01

コラム|距離、を思いながら

5年が経ちました。わたしが演劇ディレクターを務める宮崎県立芸術劇場の自主制作公演「演劇・時空の旅シリーズ」、その第1弾、BC411ギリシア『女の平和』が上演されたのは2009年のこと。5年が長いのか、短いのか、それはわかりませんが、とにかく、あれからその旅は、フランス『シラノ・ド・ベルジュラック』、ロシア『三人姉妹』、イギリス『フォルスタッフ/ウィンザーの陽気な女房たち』とつづき、今年はいよいよ、日本に帰ってきました。
ご存じない方もいらっしゃるかと思うので、改めてこの企画の説明を。「劇場を厨房に」ということでスタートしたこの企画は、古今東西の、いわゆる古典作品と呼ばれる戯曲を、九州在住、あるいは九州出身で、現在劇団で活躍されている俳優さんに、一ヶ月宮崎に滞在していただき、わたしの演出で上演するものです。オーディションは行わず、あくまでわたしが各劇団の公演に足を運んだ上で、キャスティングをさせていただいています。
さて、今年もその時期がやってきて、1月上旬から、九州各地の俳優のみなさんがウィークリーマンションに滞在しながら、稽古に励む毎日です。
今年の作品は、故井上ひさしさんの実質的なデビュー作品、1969年(昭和44年)に書かれ、初演された『日本人のへそ』です。
毎年、この企画の稽古中は、わたしたちが九州で演劇をつづけている理由を、日々考えさせられるのですが、今年の作品は、東北で生まれた主人公が東京でのしあがっていく様を劇中劇の形で描いた作品だけに、今まで以上に、「東京」や、わたしたちにとっての九州、そして演劇というものを考えさせられる毎日です。
そして、今まで以上に近い距離。すなわち40数年前の日本で、この作品が生まれたという事実。これまでの作品では、わたしは、その国に行ったこともなければ、もちろんその作品が書かれた時代も知りませんでした。けれど今回は、この国で、わたしが生まれた後に書かれた作品、一度だけですが井上さんともお話をさせていただいたこともあります。
日本人のへそ 「日本」。近すぎて遠い「ニッポン」。あれから何が変わり、そして何が変わっていないのか。そんな距離と格闘しながら、今日も稽古は続いていきます。
とはいえ、井上作品。そこには歌と踊りと笑いがちりばめられ、稽古場は熱気につつまれています。
九州に演劇があること、そのことが意味するもの、そんな一端がここにはあると思います。1月30日の都城市総合文化ホールでのプレビュー公演を経て、2月9日~11日に上演されるこの昨品に、みなさんどうぞ足をお運びください。今年は、5周年を記念した特別編集のパンフレット(無料)もありますよ。
遠いですが、宮崎でお待ちしていますね。

※詳しい公演情報はこちら http://www.miyazaki-ac.jp/?page_id=262
※稽古場ブログもあります。 http://jikunotabi.exblog.jp/

公益財団法人宮崎県立芸術劇場
演劇ディレクター 永山智行

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