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2012.10.30

コラム|大分にある演劇

皆様こんにちは。おおいた演劇の会事務局の日下と申します。急に寒さが増してきました。秋は演劇人にとって多忙で疲れの溜まっている時期…皆様もどうぞご自愛くださいませ。

大分には現在、数では145個くらいの劇団があります。定期的に公演を打てているのは4団体くらいでしょうか…。仕事をしながら、家庭を持ちながら、演劇を続けることは、どこの地域でも同じだと思いますが、簡単なことではありません。小さな劇団が出来ては活動できなくなり、消えていく…そういう様子もたくさん目にしてきました。だったら、できるだけ楽に活動しよう、できるだけ負担にならないように演劇を楽しもう…大分ではそういう劇団が増えてきたのではないかと感じます。それはそれでいいと思います。でも、作品の質を上げ、高めあうことが出来ないことに、私は個人的に物足りなさを感じていました。作品の質を上げることで、お客様を掴めるようになる。お客様に求められるようになれば、演劇を上演しやすい土壌になるはず…。

しかし、大分の演劇の歴史を紐解くと、大分にはその土壌がしっかりとあったはずなのです。20年程前、30以上の劇団が生まれました。その背景には、高校演劇や大学演劇の盛んだったことがあり、また、大分県立芸術会館が創作実験劇場で場を提供し、劇団を育てることに力をそそいできたこともありました。その波に乗って、各市町村がホールを建設し、公民館や市町村が市町村演劇として芝居を創り、その流れの中で劇団が結成されたりと、行政も大分の演劇に熱心でした。iichiko総合文化センターが建ち、国民文化祭が他県よりも早く大分で開かれたのは、大分がより地域に根ざした作品づくりをしていたからだとも言われていました。しかし、大分の県民性のためか、劇団同士はつながりを作らず、30ほどあった劇団もすぐに数えるほどに減ったと言います。そして現在、老舗の劇団も高齢化が進み、若い劇団はバラバラに活動していく中、この演劇界をどうにかしなければと「まずは横のつながりをつくろう」という声が上がり、おおいた演劇の会が設立することになりました。

蝉なきやまず~大分の空襲より~

おおいた演劇の会が設立して6年目。2回のおおいた演劇祭を行い、横の繋がりはできてきました。毎年行っている「蝉なきやまず~大分の空襲より~」という大分の空襲を扱ったリーディング公演は、大分演劇人有志によるものです。(※写真参照)大分市民は、大分市の空襲の様子を知らない方が多く、地域で演劇をする上でとても意義のある公演です。

少しずつですが、大分に演劇の土壌が蘇ってきた様に感じています。しかし、世間での評価とは裏腹に、会の中ではそれぞれの団体以外のことに時間や労力を使うことに「メリットがない」ということで、会を抜けていく会員さんが多く出ました。もちろんそれぞれの団体、活動は大切です。しかし、メリットを作るのも自分達であるはずなのです。協力し、高めあう、そして大分の演劇界が変わっていくことが、メリットに繋がるはずなのです。今現在おおいた演劇の会の会員は6団体6個人。少ないかもしれませんが、大分の演劇に熱意を持った演劇人によるこの「おおいた演劇の会」で大分の演劇界を新たに活性化する、今が正念場だと感じています。

大分駅南に2013年7月、演劇ホールが誕生します。200席の小ホールと、1200席の大ホール。小ホールはおおいた演劇の会有志による「大分市に小劇場をつくる会」の活動により勝ち得たものでした。このホールの開館がまた一つの大きな転機です。歴史を振り返っても、その流れの中にはいつも施設の存在があります。この施設をいかに活用していくかも、私たちの使命です。

大分は今、自分たちの畑を耕す時と感じています。まずは、大分にある演劇を育て、深めていきたいと思っています。どうぞ宜しくお願いします。

おおいた演劇の会 事務局 日下渚

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