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2024.04.19

コラム|不肖日髙、宮崎に帰って参りました ~離れた土地から見えた地域演劇~(宮崎)

みなさん、こんにちは。私は宮﨑在住で俳優をやっております日髙啓介と申します。
25年ほど東京を拠点に演劇活動をしておりましたが、3年前に生まれ育った宮崎に帰って参りました。以降東京と宮崎の2拠点活動のような感じでやっております。ですので宮崎演劇人としては新参者です。

私は大学卒業後に上京し、演劇に出会いました。
演劇の「え」の字も知らず雲を掴むようなものでしたが、唐十郎率いる「劇団唐組」の舞台を観た時、「この世界を作る側に行ってみたい」と強く思い、劇団の門戸を叩きました。そこで出会った俳優の深井順子と現在メンバーとして所属している「FUKAIPRODUCE羽衣」を共に結成しました。

FUKAIPRODUCE羽衣『女装、男装、冬支度』2023年 撮影:金子愛帆

演劇の現状がだんだん分かりだした頃、九州演劇の旺盛さを知りました。ある日友人に、「劇団こふく劇場」の永山智行さんが演出を担当している「みやざき◎まあるい劇場」の東京公演観劇に誘われ、後ろに転げ落ちるかと思うくらいの衝撃を受けました。俳優も演出も宮崎にこんな舞台を作る人たちが居たんだとしばし放心状態に陥りました。

みやざき◎まあるい劇場『青空』2010年

やがてこふく劇場のみなさんとも仲良くさせていただくようになり徐々に宮崎とのつながりも出来てきました。
そんな中、宮崎県立芸術劇場が主催する「演劇・時空の旅」シリーズ『ゴドーを待ちながら』(2015年)出演のお話をいただき、この企画でたくさんの宮崎そして九州の演劇人に出会いました。今思うとこのクリエーションが自分の演劇人生の分岐点だった気がします。

若い頃、宮崎や九州に自分の求めるものの限界を感じ飛び出したのですが、それはただ情報をうまくキャッチできなかっただけでワクワクすることや人は、九州にたくさんいたのです。
もし若かりし時の自分が、このワクワクする仲間たちと出会っていれば、情報をキャッチできていれば、もしかしたら上京してなかったのではないかとも思ったりします。
しかし叶わなかったからこそ演劇にも出会え、巡り巡って九州の素晴らしい演劇人にもたくさん出会えたわけですから自分のこの遠回りは良き旅だったとも思っております。

今は昔と違って、どこにいようともたくさんの情報を掴むことが出来る時代になりました。これから先さらにこの情報化社会は加速していくことでしょう。そうなるとなんでも手に入るものよりもそこでしか入手できないものがより価値を高めていきます。

宮崎は自然もとても豊かな県です。綺麗な青い海、雄大な山々。観光客も国内外からたくさんやってきます。県外から訪れるレジデンスアーティストの中には、将来宮崎に移住したいとその魅力に取り憑かれる方も少なくありません。これからは土地のポテンシャルとアートがますます結びついてその土地でしか味わえないものに、より価値を感じるようになるのではないでしょうか。

情報の波を掻き分け探っていくと、面白い人、才能は必ず近くに居ます。宮崎にも個性あふれるワクワクする劇団や演劇ユニットがたくさんあります。
先に述べた「劇団こふく劇場」のように宮崎に根付いた演劇活動をしながら全国的に人気の高い劇団もありますし、これからはその土地のポテンシャルを活かした演劇人がもっともっと全国的に活躍する時代になると思います。そしてその土地に行かないと出会えない人々や演劇の価値観がさらに高まるのではないでしょうか。

全国には首都圏以外で生活しながら全国的に活躍している演劇人や劇団はたくさん存在します。実は案外近くに面白い環境や人や集団はいて、情報をうまく利用してそれらの人々が繋がれば、都会より地域がより面白い時代になるのではないかと思います。そしてそれぞれの特色を持った人々が地域やジャンルの垣根を超えて結びつき化学反応を起こしたら、きっとかなりワクワクするものに出会える気がするのです!

日髙啓介(FUKAIPRODUCE羽衣)

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