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2025.10.06

コラム|朗読劇で戦後を考える(大分)

はじめまして。おおいた演劇の会事務局の小野と申します。

私が所属している「おおいた演劇の会」は、劇団や個人で演劇に関わっている人たちが集まって、大分の演劇がもっと盛り上がるために何が必要か?を考え企画している団体です。

劇団ではないため定例公演はありませんが、2018年に大分で開催された国民文化祭や、周年記念など、節目のタイミングで演劇公演を実施しています。

ちなみに公演やワークショップを行う際は演劇経験を問わず公募することがほとんどです。そのため「演劇に挑戦してみたいけどいきなり劇団に入るのはハードルが高い……」そう感じる方の受け皿としても機能しています。この地道な演劇普及活動がいずれ花咲くよう、小さな種をコツコツ蒔き続けている団体です。

 

上記で定例公演はないと書きましたが、毎年夏に朗読劇「蝉なきやまず ~大分の空襲より~」(脚本・演出 清末典子)の公演を主催しています。今年で開催16年目を数えました。

今回はコラムの場をお借りして、そんな「蝉なきやまず」についてご紹介させていただきます。

今年の公演

 

「蝉なきやまず ~大分の空襲より~」は、「大分の空襲」(大分の空襲を記録する会 編/1975年)という1冊の手記をもとに、演出であり当会会長の清末典子によって書かれました。

「大分の空襲」は太平洋戦争中に大分県内で空襲にあった市民の体験を中心にまとめられており、当時の生活や空襲の状況を細かく知ることができます。特に1945年7月16日夜半から17日未明にかけての空襲は「大分大空襲」と呼ばれ、大分市中心部一帯が焼けつくされるほど大きな被害を受けました。劇中でも大分大空襲の惨状がとても印象的に描かれています。

そして「蝉なきやまず」はただ戦争の悲惨な状況を描くだけではなく、未来への希望を伝える作品です。希望をもって今を、未来を生きるエネルギーを感じてもらえるにはどうすればよいか、稽古場で参加メンバー、演出とで何度も話し合います。

 

公演の参加者は公募で募集しており、毎年メンバーが異なります。これまで小学生から70代まで、なんと100人以上が出演しました。また多くの方の目に留まるよう、開催場所は公演や公共施設、学校などいろいろな場所にて無料で実施してきました。

大分駅前

今年の会場は大分駅前のメインストリート沿いでした。劇中でも語られる場所のまさに目の前で公演だったため、場所の記憶を通して、地元・大分でも戦争で大きな爪痕が残ったこと、そこから復興し、今の私たちの日常につながっていることを観てくださった方により強く実感してもらえたのではないでしょうか。

 

戦後80年--今年、様々な場所で幾度となく耳に目にしたフレーズです。その影響もあってか、雨天にもかかわらずたくさんの方に「蝉なきやまず」を観ていただくことができました。様々な形で作品に関心を寄せていただいたことに感謝でいっぱいです。

同時に、戦後80年が過ぎても、世間が戦争と平和について関心を持ち続けることを願わずにはいられません。

 

過去に参加した子役が時を経て一般参加として加わったり、あるいは学校の平和授業で「蝉なきやまず」を題材として用いたりと、作品を通して小さな種が少しずつ育っている姿を見ると、長年続けることの意義を感じています。

 

これからも「戦後」と「蝉なきやまず」が続く世界であるよう、来年の公演に向けて、また種蒔く準備を始めます。

 

小野目依(おおいた演劇の会 事務局)

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